生成AIに読書感想文は書けるか?(1)

ChatGPTの発表からにわかに話題になっている生成AI。文部科学省からもいち早く「読書感想文」で使用するのが不適切だという通達が届きました。

では、生成AIに読書感想文を書かせることは可能なのか。

生成AIは、インターネット上の文章から学習を行うため、作品の内容やあらすじ、書評などがアップロードされていなくてはなりません。また、ChatGPTは2021年9月までのデータをもとにしているため、それ以降に発表された作品は対象外となります。

よって、ここでは、ChatGPTに夏目漱石の「坊っちゃん」(明治39年)で、読書感想文を書かせてみます。

人間 夏目漱石の「坊っちゃん」の感想文を1200字で書いて下さい。
AI

夏目漱石の小説「坊っちゃん」は、日本文学の名著として多くの読者に愛されてきた作品です。この小説は、主人公の坊っちゃんが自らの成長と葛藤を通して、人間の成熟と自己理解を追求する姿を描いています。私の感想として、この作品は感情豊かで深い洞察力に満ちており、多様なテーマ性が読者の心を引きつけます。

まず、坊っちゃんという主人公は、当時の日本の新しい教育制度が導入される中で成長しています。彼は厳格な教育を受け自分の価値観と社会の価値観との間で葛藤を抱えます。この葛藤は、現代でも共感される普遍的なテーマであり、読者は坊っちゃんの心の葛藤に共感し、自らの経験と重ね合わせながら物語に没入します。

また、坊っちゃんの成長の過程において、彼は様々な人物との出会いや対話を通じて、自己理解を深めていきます。特に、師匠との関係や友人との交流を通じて、彼の心の変化が描かれていますこれらのキャラクターたちは、坊っちゃんの心の葛藤に対して助言や啓示を与え、読者にも考えさせられる場面が多く見受けられます。

さらに、小説は日本の社会状況や風習をリアルに描写しています。明治時代の日本の姿が生き生きと描かれており、当時の教育制度や家庭のあり方人々の心の中に潜む葛藤や欲望が鮮明に浮かび上がります。それらの描写は、読者に歴史的背景を理解させ、同時に現代に生きる私たちにも考えさせる重要な要素となっています。

一方で、私が感じた小説の欠点としては、時折冗長な描写が見られることが挙げられます。特に、坊っちゃんの内面の葛藤や心の変化を強調するために、長いモノローグが織り交ぜられている部分があります。これは読み手にとって、物語の進行を少し鈍らせる可能性があると感じました。

総括すると、夏目漱石の「坊っちゃん」は、人間の成長と自己理解をテーマにした心に残る作品です。坊っちゃんの内面の葛藤や彼が経験する人間関係は、多くの読者に共感されることでしょう。また、当時の日本社会の姿がリアルに描写されており、その歴史的背景も読者に深い理解を与えてくれます。欠点もあるかもしれませんが、それでも「坊っちゃん」は素晴らしい文学作品として、今後も多くの人々に読み継がれることでしょう。

 

なんだかそれらしい文章が出力されます。「当時の日本の新しい教育制度が導入される中で成長しています」などは、生徒が書いてきたら「よくぞ調べたな!」と感心してしまいます。

しかし、よくよく読んでみると、作品とずれていることに気が付きます。まず、「師匠との関係」ですが、「坊っちゃん」に師匠など登場しません。また、当時は、近代化における社会と個人の歪みをテーマとする小説が多く書かれますが、「坊っちゃん」はさほど内省的ではありません。全体としても、書きたいことが分散していて、読書感想文として、コンクールで入賞するのはまず不可能です。

無論、対話型AIは、プロンプト(指示)を工夫したり、対話を重ねていけば、出力される文章は向上していきます。しかし、その細かな指示を出すには、小説の内容をきちんと理解し、どのような感想文を書きたいのかを具体的にイメージする必要があります。

着想を得るには有用ですが、現時点の生成AIでは、まともな「読書感想文」を書くことはできません。

 

なぜ、文部科学省は、生成AIの不適切な使用法として、「読書感想文」を例に挙げたのでしょう。実際に生成AIに書かせてみたら、その限界に気付くはずですが。

理解が難しいものに対して、イメージだけで議論がなされないことを願います。

 

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satch都内公立中学校教諭
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